「“ネガティブな理由”で転職を決意していませんか?」という記事にも書きましたが、転職活動を始めるにあたって、ネガティブ感を引きずったままでは、決して良い結果には結びつきません。
中には、転職そのものを「逃げ」と考えてネガティブにとらえている人も多くいます。
逃げで転職すると、またすぐ転職を繰り返すことになるとか、逃げた原因が解決しないまま転職すると、転職先でもまた同じ原因に対面することになるから、いつまでも成長できないなどという人もいます。
今回は、転職は「逃げ」なのかということについて考えてみたいと思います。
転職が「逃げ」かどうかという前に、その逃げ道自体を見つけられなくなってしまう人もいます。
2016年に発覚した、電通の新入社員のいたましい過労死事件は、まだ記憶に新しいところです。パワハラや人間関係のトラブル、長時間労働などの問題がクローズアップされる中で、「死ぬくらいなら、なぜ会社を辞めないのか」といった感想をもつ人もいるでしょう。
「「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ) 」(ゆうきゆう・精神科医、あさ出版)というベストセラーでは、仕事や会社に追いつめられている人がどのようにすればその状態から抜け出す方法について書かれています。
過労自殺にまで追い込まれてしまう人にとって、「辞める」という判断ができなくなっているケースは多くあるそうです。
毎日の沈んだ気持ち、また怒られるかもといった恐怖、自分はできないという勘違いから脱出するにはどうしたらいいか。
ブラック体質が根づいている企業では、そんな人を気遣って部署異動させたり、職務を見直してくれたりするケースは非常に稀です。
そんな場合、会社や家族に迷惑をかけてしまうとか、世間体や他人からの評価を気にして、負の気持ちが心の中で積み重なって、いつしか退職という選択肢が消えてしまうのです。
今の仕事で成果を出せていない人は、その仕事への適性がないか、努力の方向が間違っているかのどちらかです。もし前者であるなら、向いてないことをひたすら頑張り続けることには意味がありません。いつか努力が報われる日をめざしてしがみつくのは、最もおすすめできないやり方です。続ける意味があるのは、自分の才能や強みが活かせる場合だけです。「3年は我慢しろ」などという人もいますが、気にする必要はありません。
転職は、逃げることではありません。自分が逃げようとしている課題に向き合い、その原因を突き詰め、改善する努力をしたうえで転職を決断するのなら、それはもはや「逃げ」ではないと考えるべきでしょう。「逃げるために転職する」と思いこんでしまうから、「逃げ」と感じてしまうだけなのです。
自分の得たい未来のために転職を考えることは、追いつめられている精神状態を落ち着かせてくれるはずです。漠然と「仕事をやめたい」と考えるのではなく、「この仕事ができるようになりたい!」という気持ちになっていけば、ふさぎこんでいる毎日に別れを告げることができるようになります。
「全力を尽くしたものの、希望するモノが手に入らず、新たな挑戦の場を求めたい」という動機には、ネガティブなものはなく、むしろ「攻め」の姿勢と言えるものなのです。
もちろん、一度転職すれば、そんなことを考えたことがない人と比べれば、ひとつ選択肢の多い人生になりますから、次もイヤなことがあったらすぐに辞めるのではないかと思われてしまうかもしれません。しかし、本当に自分がそんな人間かどうかということは、自分がよく知っているはずです。誰かに自分の人生を言い訳する必要などないのです。
人は居場所を見つければそこにとどまります。楽しみながら働けば、生産性も上がるし、精神衛生上も絶対良いはずです。自分の天職と呼ばれるものに出会うまで、弱る心を鍛えて一生懸命にやれば、人生は必ず好転します。
むしろ、ブラック企業でいつまでも我慢をしていたり、パワハラで精神を消耗しつくして過ごしていることのほうが、人生としては問題があります。
探してみると、自分に合った会社は意外と見つかるものです。過労死する前に考えてみる価値は絶対にあります。
「逃げ」るように会社を辞めた人は、その後もうまくいかない、というイメージを持っている人もいるかもしれません。会社に残った人から見ると、辞めたあとにどんな人生を送っているかなどわからないわけですから、そんなふう思われがちなんですね。
実際には、逃げで会社を辞めて転職しても、ちゃんとうまくいっている人は普通にたくさんいます。今の会社でうまくいかなかったからといって、次の会社でもうまくいかないという根拠なんて、あるわけがないのです。
転職は、様々な会社、様々な仕事を経験して勉強し、習得できる、非常に良いスキルアップ方法です。20代の間に転職して複数の会社のやり方を知り、多様なお客様とのつながりをつくり、様々な分野の同僚をつくることは、30代以降の人生を迎えるための強い武器となります。
いかがでしょうか。
2016年のヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のタイトルが、ハンガリーの諺から来ていることをご存じでしょうか。意味は「自分の戦う場所を選べ」ということだそうです。まさに今回の記事が言いたかったことでした。
毎日が苦痛でしかない、場合によっては健康がおびやかされるような環境にあって、人生の貴重な時間を無駄に費やしているより、そんな会社はさっさと見切りをつけて、新たに活躍の場を探すことのほうが、何倍も価値があります。転職が「逃げ」かとうかを悩むこと自体、まったく非生産的なことだということを肝に銘じましょう。
いよいよ退職を決意し、辞めることになったら、いくら嫌だった会社でも、お世話になった職場ですから、余裕を持って上司に退職の意思を伝え、業務の引き継ぎや、取引先、お世話になった人への挨拶回りなど、なるべく配慮して退職準備を進めましょう。
こちらの記事も参考にしてください。→転職回数を気にしている人のためのアドバイス