転職活動を始めると「転職エージェント」という言葉を目にすることと思います。転職サイトやハローワークの使いこなし方については別な記事で紹介しましたが、転職エージェントは転職サイトとは何が違っているのでしょうか。利用することのメリットや、選び方はどうすればいいのでしょうか。
今回は、この転職エージェントについてご紹介しますね。
転職エージェントというのは、厚生労働省の許認可のもとに有料職業紹介事業を行う人材紹介会社、そしてそこに所属しているキャリアコンサルタントです。
転職エージェントは、これから転職活動を行うあなたのアドバイザー役であると同時に、企業から求人の情報を預かる立場にあります。登録をすることによってあなたの担当が付いて、あなたと企業側の架け橋として様々な相談に親身にのってくれます。
転職エージェントは求人情報の紹介から始まって、選考書類の書き方や面接のアドバイス、面接日の調整、採用条件・入社日のすり合わせまでサポートしてくれます。言うなれば、転職希望者の代理人ですね。
転職者の側には料金はかからず、面倒な手続きをすべて代行してくれるので、転職活動をするならぜひ利用すべき存在です。
ただし、うまく使いこなすには、ポイントを知っておいたほうがいいでしょう。以下の記事をじっくり読んで活用してください。
転職を考え始めたあなたは、すでに転職サイトや求人広告サイトなどをあちこち見ていることと思います。
転職サイトは気軽に多数の情報を収集でき、自分のペースで転職活動が進められますが、そこに掲載されている求人情報は、企業側が広告として掲載しているものです。
求人企業は、転職サイトに自社の求人票・求人情報をお金を払って掲載し、転職者はその求人情報を閲覧して直接応募をすることになります。
転職エージェントの場合は、転職者はプロのキャリアコンサルタントとマンツーマンの面談(カウンセリング)をして、相談にのってもらいながら求人情報を紹介してもらいます。転職サイトには情報だけで人は媒介していませんが、転職エージェントは同じことを人がやってくれるわけです。
転職サイトと転職エージェントのどちらを使うべきか迷ってしまうかもしれませんが、転職者や会社にもよるので、それは一概には言えません。転職活動全般でいえば、どちらも利用するほうがいいでしょう。
転職エージェントは、転職者には料金がかからず、企業の側が求人が成立すると転職エージェントに成功報酬が支払うビジネスです。したがって、応募する会社が小規模な場合などでは、転職エージェントに支払う成果報酬コストをかけたくないために転職サイト経由での応募の方が有利なこともあります。逆に、採用に予算をかけている会社は、優秀な人材を採用するために転職エージェントを積極的に活用しますので、転職エージェント経由の応募の方が有利です。
転職サイト経由の求人には大変多くの応募が集まりますので、応募者一人ひとりのレジュメやエントリーシートは埋もれてしまいがちです。一方で、転職エージェントが企業にもたらす応募情報は、プロのコンサルタントが1人1人面談をした上での推薦ですので、埋もれにくいという特長もあります。
求人を行う企業の大半は、採用後のミスマッチを非常に大きなリスクとして考えています。これは、引き継ぎや退職処理、採用、育成、人事調整といったことに大きなコストがかかるためです。
「すぐに辞めた」「採用したのに活躍してくれない」といった状況を避けたい企業では、素性のわからない個人応募よりも、多少仲介料がかかったとしても、転職エージェントの推薦の方を信頼する傾向があります。さらに、転職エージェント経由で採用した人材が短期間で辞めると、転職エージェント側では企業側に紹介料を返還する契約になっています。そのような場合には、なおさら、転職エージェント経由の応募が有利なことになります。
転職エージェントが行ってくれることには、
といったことがあります。
面倒なことをやってくれるために、応募先の企業と直接やり取りをすることになるのは、本番の面接ぐらいということになります。
具体的な利用の流れは、次のようになります。
転職者は、転職エージェントのサービスを無料で受けられますので、使わない手はありません。腕利きのエージェントの中には、たとえ面接で失敗しても、うまくプッシュしてくれて不合格がくつがえるなどということもあります。
あらためてメリットとデメリットを確認してみましょう。
転職エージェントは、あなた個人の志向性やキャリアを客観的に棚卸しし、言語化してくれます。どんな会社が自分には向いているのかを知りたかったり、自分が何をしたいのかという考えがまとまっていない人は、ぜひ転職エージェントを活用すべきでしょう。
専任のコンサルタントが、あなたの転職を成功に導くことをミッションとする担当としてつき、大変心強い存在になってくれます。
転職エージェントはあなたの市場価値を明らかにします。自分の強みや特性は、自分ではなかなか明確に把握しにくいものです。自分自身も気づいていないような市場価値を客観的に見つけ出し、それに適した求人を紹介してくれるわけですから、当然、入社後のミスマッチも防ぐことになります。
転職エージェントは求人企業の現場決済者や人事担当者、役員や経営者から直接情報をもらっていますから、まだ転職サイトには掲載されていないような求人情報もたくさんストックしています。転職者としては、可能性や選択肢を広げられることになります。
なぜそのような非公開求人があるかというと、企業側の考え方として、広く人を集めて可能性を探るのではなく、求める人材だけをピンポイントで入社させたいという思惑があるからです。
履歴書や職務経歴書の添削をしてもらったり、面接でよく聞かれる質問の傾向を教えてもらえたり……新卒の就活の際には、大学の就職課などでも面接対策をしてくれたりしますが、転職者は現職の仕事をしている場合もあって忙しいものですし、ハローワークでもアドバイスはしてくれますが(ハローワークが教えてくれた「書類選考に通る職務経歴書」の書き方という記事をご覧ください)、転職エージェントでは、採用担当者や面接官の視点に立った実戦的なアドバイスをしてくれます。
転職エージェントは募集企業からの信頼がありますので、非公開求人ではなくても、転職サイトに掲載されている求人情報には書かれていないような情報も教えてもらえます。その求人で求められているのはどういうことなのか、なぜそのような人材がほしいのか、どんな事業展開、経営戦略を構想しているのかなど、転職者の聞きたい情報を入手できる貴重な情報源になります。
上にも書きましたが、転職者の7~8割は現職での仕事を継続しつつ、転職活動を行っています。転職サイトで応募する場合は、面接の日時調整はもちろん、条件交渉まですべて自分で行わなければなりません。面接日の調整などを仕事の合間に行うのは意外と大変で、ぐずぐずしているとチャンスを逃してしまうこともあります。転職エージェントの場合はそういったことをすべて代行してもらえますので、非常に便利です。
選考が進んで内定となった場合での年収オファーなどについても、間に入ってうまく調整・交渉してくれるため、スムーズに条件交渉を進められます。
転職エージェントの担当者の資質や能力には、コンサルタントとしての力量差があります。つまり当たり外れがあるわけです。担当企業が多いがゆえに対応が雑だったり、希望する業界の知識をあまりもっていなかったり、そもそもコンサルタントとしての経験が浅く、こちらの要望を汲んでくれなかったりする担当者も中にはいます。合わないと感じたら担当者を変えてもらうなどの対応が必要になります。
転職エージェントは内定を得て成功報酬をもらえるので、採用される見込みが低いような求人情報は基本的に紹介してくれません。あなたのキャリアを客観的に把握し、そこでフィルターにかけてしまいますので、これまでに発揮できていないあなたの力を試すような企業への転職には向いていないでしょう。
前述したように、成功報酬は企業側が提示する転職者の年収に比例しますので、あなたの志向に合わない企業をす捨て来るようなコンサルタントも中にはいます。
転職エージェントは、転職者の代理人でもありますが、企業側の代理人でもあります。企業側が要望している条件に合わない転職者については、あまり積極的になってくれません。
これまでのスキルと経験を重視しますので、ドラスティックにキャリア転換をしたいような場合には向いていません。
また、質のいい求人情報を専門に扱っている転職エージェントでは、登録基準そのものが厳しい場合があります。TOEICのスコア、現在の年収、無職期間の長さ、保有スキルなどがその基準です。
転職サイトなら、求人情報を見てすぐにその場で応募できますが、転職エージェントの場合は、まずアポをとって面接・カウンセリングを受けて、それに合う求人案件をピックアップして、感触を確認して、というステップを踏むことが必要になります。登録してすぐに転職先が見つかるというわけではありません。
一口に求人案件といっても、企業の規模や業界などによって欲しい人材は様々です。すべてをカバーできる転職エージェントはほとんどいないでしょう。したがって、転職エージェントごとに特色や得意不得意があります。第二新卒に強い、エグゼクティブ層に強い、女性の転職に強い、IT業界に強いなど、特色を見きわめて、自分にマッチするエージェントを見つけましょう。
上のデメリットで紹介したように、場合によってはあなたの意思に添わない求人情報を紹介されてしまうこともあるかもしれませんので、転職エージェントに登録する際は実績やクチコミなどを参考に、最適なところを選びたいものです。
転職エージェントには、「総合型」と「特化型」の2種類があります。業界や職種を指定していないのが総合型、業界などの範囲を指定しているのが特化型です。希望する転職先やキャリアプランに合わせて選択しましょう。
総合型転職エージェントは幅広い求人を多く扱っているため、広い視野で転職先を考えてもらえます。異業種への転職でもある程度対応してもらえます。転職エージェントとしてもネームバリューのある大手が多く、安心感がもてますが、「広く浅く」になってしまうことは否めません。担当者レベルでは業界知識をあまりもたずにサポートすることもあります。
一方、特化型転職エージェントは、IT業界や理系など、ある業界や分野に特化して人材紹介サービスを行っています。特定の業界への転職を強く希望しているような場合は、こちらがおすすめです。それぞれの業界・職種を熟知しているキャリアアドバイザーが在籍しており、企業の内情からキャリアアップを目指す方法などについても詳しく相談にのってもらえます。
他業界も視野に入れて検討していきたいときにはあまり向いていないでしょう。
いずれの場合でも、面談/カウンセリングで、「この人、頼りなさそうだな」などと思ったら、担当を変えてもらったり、別の転職アドバイザーに切り替えましょう。いいエージェントとめぐり合うために手間をかけてしまうことになっても、結果はそれに付いてくるはずです。
転職エージェントを選ぶためのポイントとしては、次のようなものがあります。
できればいくつかの転職エージェントを同時に利用してみて、判断することをおすすめします。
また、こんな転職エージェントは避けたほうがいいでしょう。
転職エージェントでしか享受できないメリットに、思ってもいなかったような最適な求人を提案してもらえるということがあります。
特定の行きたい企業が決まってない場合は、その転職エージェントの提案で企業を選定していくことになりますから、転職エージェントの提案力が高いか低いかは、とても重要です。提案力が低いと、希望と異なる求人ばかりを勧められたり、コミュニケーションの齟齬が頻繁に起こったり、無駄な労力を使うことになるのです。
自分だけでは到底たどり着けないような会社にたどり着くことをサポートしてくれるのが、転職エージェントなのです。
転職エージェントは、親切心だけであなたにアドバイスしてくれているわけではなく、れっきとしたビジネスです。転職者の代理人でもあると同時に、企業側の代理人でもあります。転職エージェントにとって、あなたという転職者は求人企業に紹介される「商材」です。
次のようなポイントに注意しましょう。
転職エージェントは、よい会社、よい担当者にめぐりあうことができれば、信頼できる専門家として、あなたの転職の可能性を大きく広げてくれます。迷っている方には文句なくおすすめします。なるべく複数の会社に登録し、あなたにあった転職エージェントを選んでください。